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胃 ・ 十 二 指 腸 潰 瘍の食事療法

2000.5.18
アトピーなんか飛んで行け!の会

「食事で病気を治す本」中村丁次著より

■原因と症状

胃・十二指腸潰瘍とは、胃や十二指腸の壁に潰瘍ができる病気です。潰瘍とは、胃や十二指腸の粘膜、粘膜下層、 筋層などにキズができることです。つまり、キズができる仕組みが、潰瘍の成因となります。
私たちの消化液は、胃酸やぺフシンのように、強いたんぽく質分解作用をもっています。これらが、肉、魚、卵などのたんぽく質食品を消化するわけです。ところで人聞の消化管もたんぱく質でできているために、そのままでは消化管も自己消化されてしまいます。これを防御しているのが粘膜です。
粘膜は、胃酸やぺフシン、胆汁、さらに薬物などの攻撃に常にさらされているわけですが、これらに抵抗してるのが、粘膜の血流や粘液、さらにホルモンです。
 潰瘍は、これら攻撃因子と防御因子のバランスが崩れ、攻撃因子のほうがより優位になったときに発 症するということができます。
そこで問題は、このバランスを崩す 原因ですが、それには、粘膜に対する物理的および化学的刺激、つまり、感染、火傷、外傷、中毒、さらに精神的ストレスなどが考えられています。これらが、粘膜の抵抗力を弱めたり、逆 に攻撃方を強めたりするのです。
症状は、潰瘍の発生部位により異なってきます。食道や胃の噴門部にできた場合は、食後の疼痛が特徴です。十二指腸やその周辺にできた場合、空腹 時に痛みがおき、食後には緩和されるのが特徴です。
なお、潰瘍の痛みは30分以上持続するのが―般的です。周期的に毎日出現し、数週間つづき、その後はしぼらく消失します。しかし数か月、数年後に再び出現することが多くみられます。

 

■治療方法

胃・十二指腸潰瘍の治療目的には、とりあえず痛み、悪心、嘔叶などの自覚症状を軽減すること、粘膜への攻撃因子を除去し、抵抗性を増大させ潰瘍を治癒させること、そして再発の防止などがあります。
治療方法は、
(1)薬物療法
(2)食事療法
(3)心身の安静
などがあります。
(1)薬物療法
攻撃因子である胃酸の中和と、ぺプシンの消化作用を減少させる薬剤が用いられます。代表的なのは、制酸剤、抗コリン剤、抗ぺフシン剤などです。
粘膜上皮細胞を増殖し、さらに粘液 の生産性を高め、粘膜の抵抗性を高める組織修復促進剤や、胃液分泌を抑制するホルモンなどの使用も考えられています。
(2)食事療法
発作時には、胃の運動や消化液の分泌を抑制するために、―時的に絶食し、流動食、粥食、そしてご飯食へと徐々に移行していきます。安定期に入ったときの食事療法の目的は、粘膜の抵抗性を増大させるために十分な栄養素を補給することと、胃液分泌を抑制するために刺激性食品を控えることです。
(3)心身の安静
胃・十二指腸潰瘍の発症する前に、家庭の問題、職場での人間関係や仕事上の問題などでストレスがかかっていることが多くみられます。精神的な不安状態や緊張が原因になります。
 また過労が原因していることもあります。原因になっていたと考えられる要因を分析・整理し、その解決策を検討することが必要です。もし、問題そのものが解決できなければ、それを少しで も解消できるようなストレスの緩和方法を考えるべきです。
入院治療するのが最も理想的ですが、外来で、日常生活を営みながら治療を行う場合は、過労をさけ、休養を十分とり、ストレス解消につとめます。
 

■食事療法のすすめ方

あまり厳しい食事制限をしないで、積極的に栄養素を補給し、粘膜の抵抗性を増大させることを目標とします。基本的には次の点には気をつける必要があります。
[1]発作時には絶食
悪心、嘔吐、出血など自覚症状が激い、発作時には、―時的に絶食し、点滴で栄養素を補給します。しかし症 状がおさまったらできるだけ早い時期から、流動食、粥食、さらにご飯食へと移行していきます。出血がある場合でも10日前後でご飯食になるようにします。
流動食や粥食期間中は、主食のみならず副食の材料や調理法も消化がよく、食べやすいものにします。この時期の具体的な食品選択は急性胃炎の項(P51)を参考にしてください。
[2]刺激性食品をさける
胃液の分泌を充進させる食品はさけます。分泌を充進させる食品には次のようなものがあります。
●アルコール飲料
どのようなアルコール飲料も、胃液の分泌を充進します。とくに、アルコール度の高いもの、ビールのような炭酸系のものはその作用が強いので禁止します。
●カフェイン飲料
コーヒー、紅茶、抹茶、ココアなどカフェイン含有量の多い飲みものが胃液の分泌を亢進します。
●炭酸飲料
ビール、サイダー、ラムネ、コーラなど炭酸飲料は、胃液の分泌を亢進させると同時に、ガスが胃内の容量を増大し、潰瘍部を悪化させます。
●香辛料、かんきつ類
各種香辛料やニラ、ニンニクのような香りの強い野菜、さらに、夏みかん やレモンのような酸味の強いかんきつ類なども刺激物になります。
[3]消化のよい食品や調理法を選ぶ
消化のよい食品とは、物理的に固くないもの、難消化性物質である食物繊維の含有量が少ないこと、さらに胃内停留時間が短かいことなどが条件となります。
[4]たんぽく質、ピタミン、ミネラルを十分摂取する
粘膜の抵抗性を高めるために栄養素を十分補給します。とくに粘膜の材料となるたんぱく質やミネラル、さらに代謝の調整を行うビタミンなどが必要です。
[5]食事は規則正しく、ゆっくり、よく 噛んで楽しく食べる
欠食して食間があくと、食物が胃に入ってこないために胃液濃度は濃くなります。―方食事回数が多くなりすぎても胃液分泌量は増大します。1日3回、決まった時間に食事をとるようにします。また、咀しやくを十分にすれば、それだけ胃腸の負担は軽くてすみます。楽しく、おいしく食べることは、ストレス解消に大いに役立つのです。
 

■上手に食事療法を

●食事療法の注意点
食事の制限を厳しくしすぎると、食べることがストレスになり、逆に潰瘍の悪化や再発を助長してしまうので注意が必要です。3回の食事はストレス解消の場と考え、おいしく楽しく食べることも大切です。
<治療用特殊食品ガイド>
特別に利用する食品はありませんが、栄養状態が著しく悪いときは消化のよい経腸栄養剤(濃厚流動食)を用います。  




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